真の童話
昔から童話の終わり方はハッピーエンドと決まっている。
そうじゃないのもあるけど、それは主人公がそれを自分で選んだんでしょう?
悔いが残る訳ないじゃない。
もちろんあたしもそう信じて疑わなかった。
だって、ハッピーエンドだから童話って言うんじゃないの?
少なくともあたしはそう思っている。
だから、望まないバットエンドはあってはいけないの。
「リナさん、こんにちわ」
そう言って現れたのはゼロス。
かなり位の高い魔族で、あたしの・・・・・こっ、こっ、こここっ・・・・こ、恋・・・人・・。
あたし達が付き合うきっかけとなったのは、ある事件だった。
その頃あたしは仲間と別れたばかりで、一人である事に慣れていなかった。
その時依頼されていたのは魔族を倒す事。
といっても、あたしが今まで戦ってきた中では最低ランクに値するくらい弱い魔族だ。
そして戦う事になった時、いつもと同じような戦い方をしてしまい隙が出来た・・・・・。
もう仲間とは別れたのに・・・・・・・。
すっかりそのことを忘れていたのだ。
「アメリア、そっちお願い!!・・・・・・って、もういないんだった〜!!!!」
そんな事言ったってもうおそい、魔族の刃のような腕がまっすぐあたしへと振り下ろされる───!
よけきれない!?
その時あたしの脳裏をよぎったのは───
「──っゼロス!!」
あたしは無意識にあいつの名前を叫んでいた。
──パシュッ!
次の瞬間変な音と共に今まであたしを襲おうとしていたはずの魔族が跡形もなく消え去っていた。
「・・・・・・??」
「呼びましたぁ?」
「うひゃあ!!ゼ、ゼロス!?」
あたしに声をかけてきたのは紛れもなくゼロスだった。
「なんでここにいるのよ!?」
「だって、リナさんが呼んだんでしょう」
さも当たり前のようにさらっと言ってくれるゼロス。
呼ばれて出てくる魔族なんて聞いた事ないぞ!!
魔法のランプの精じゃないんだから・・・・・・・。
「呼んだからって・・・・・・・魔族が普通出てくるとおもう?」
「リナさんこそ普通人間が魔族なんて呼びます?」
「・・・うっ・・・・それはそうだけどぉ。そういや、なんであんたの名前が浮かんだんだろ?」
「教えて欲しいですか?」
「は?なんであんたがわかるのよ」
「・・・はぁ・・・・お子様ですねぇ」
むかっ!
魔族にまで言われたくないやい!!
そう思って右手を振り上げ────止められた・・・・。
「すぐに暴力に訴えるのはよくないですよ?」
「どうせきかないくせに」
「そんな事しなくても教えてさし上げますよ。いいですか?1回しか言いませんからちゃんと聞いててくださいね」
「はいはい、聞いてるわよ」
「リナさんがとっさに僕の名前を叫んだのは」
「叫んだのは?」
「僕の事が好きだからですよ」
──ドクンッ!
思ってもなかった言葉にあたしの心臓は大きく鼓動した。
ドキッなんてもんじゃない、心臓が体から飛び出るような錯覚さえ覚えた。
あたしにとってはそれぐらいの衝撃だったのだ。
ゼロスがあたしを呼びかけているようだが、心臓がバクバクいっていてそれどころじゃない。
な、なんでこんなに心臓がうるさいのよ!?これじゃ、ゼロスにも聞えちゃうじゃない!!
お願いだから止まってってば〜!!!あ、止まったら死んじゃうか。
死ぬのは嫌だから・・・・静かになって〜!!!よし、これならOK♪って、そんな事考えてる場合じゃな〜い!!
とにかくパニックしていて、あたしの頭の中はぐちゃぐちゃだった。
ゼロスが目の前で手のひらをひらひらさせている事にも気づかない。
「・・・う〜む、ストレートすぎましたかねぇ。仕方ない、これでいきましょう・・・・・・ちゅっ♪」
あたしの唇にいきなり冷たいものが触れた。
それがキスだとわかるまでに30秒・・・・・・・。
「───っ!?ななななな、なっ」
「ほら、やっぱり僕のこと好きでしょう?」
「・・・・う〜・・・・嫌いじゃないけど・・・・」
「素直じゃないですねぇ、僕はリナさんが好きですよ?」
「魔族にそんな感情ないでしょう」
「全くないわけじゃありません。似たような感情はあるんですよ」
「・・でも・・・・」
「でも?」
「・・・・やっぱり・・・好き・・かも」
最後の方はやっと聞き取れるか聞き取れないかぐらいの小さい声。
ゼロスは赤くなって下を向いてしまったリナを両手で優しく包んだ。
「僕の言った事は当たってたでしょう♪」
と、まあこうして付き合う事になったのだが・・・・・・・。
こいつはしょっちゅういなくなるし、いきなり消えるし、逆にいきなり現れるし・・・・。なんでこんなやつ好きなんだろう?
そりゃ、危ない時は助けてくれるし強いし見た目も悪くないけど・・・・・。
「リナさん?さっきから黙ってますけどどうかしたんですか?」
「へ?あ?なんでもない」
「リナさんがぼ〜っとしてるから勝手に服を変えさせていただきましたよ♪」
言われて自分の服を見てみると・・・・・・・・なんだこりゃ!!!
真紅のふわりとしたかわいいドレス。
そんなにごてごてのデザインじゃないので嫌いではないけど・・・・・
「あたしはどっかのお姫様か!?」
「本当は純白のドレスにしようかと思ったんですけど、どうせ後で紅くなっちゃうので真紅にしてみました」
どうせ後で紅くなる、その言葉の意味をあたしは全く気にしていなかった。
「これじゃ、まるで童話に出てくるお姫様ね。隣に王子もいるし♪」
「童話、ですか?確かにその通りですね」
「じゃあ、やっぱりハッピーエンドで終わるのかな」
「知らないんですか?本当の童話を」
「え?」
「教えてあげましょう、最期ですしねぇ」
ゼロスの両目がゆっくりと開かれる。
そこには思った通り紫色のきれいな瞳。
いつ見てもきれいよね、この色って。
あたしはゼロスに手を伸ばした────が!?
───パシュッ!!
この前と同じ変な音??
すぐには理解できなかった。
なんで手が届かないんだろうって事ばかり気にしていたから・・・・・・。
「・・・・?」
「童話はね、バッドエンドの方が多いんですよ。そして残酷で卑しくてずる賢い」
「何言ってるの?・・・・・・っ!・・ごほっ!?・・・」
あたしの口からどろりとした真っ赤な液体が流れ出た。
次から次へと止めど無く流れる液体。
それはあたしの───血。
「これが物語りだとしたら、そうですねぇ。こんな感じでしょうか」
|