唯一の違い
<3>

リナはクリスタルぎりぎりまで手を伸ばし、力を集中した。
──ッキーン・・・・・・・パリッッ!!
大きな音を立てて崩れていくクリスタル。
リナはそれを満足そうに眺めていた。
「どお?これでいいんでしょう、兄様♪」
くるっと後ろに振りかえり、どうだと言わんばかりに聞いてくるリナ。
ゼロスはそれに苦笑しながらもにっこりと笑ってほめ言葉を送った。
「はい、上出来ですよ。それより後ろに下がっていてくださいね」
「ん?なんで??」
きょとんとした顔で聞いてくるリナの手を引いて、ゼロスは自分の後ろに隠した。
目の前には完全に割れたクリスタルと、中に入っていた人間が3人。
まだ3人は意識がないらしく床に倒れてころがっている。
目を覚ますのは時間の問題だろう。
「ねぇねぇ、なんであたしを隠すの?」
「この3人を脅かすためです♪良いこだから僕の後ろにいてくださいね?」
「はぁ〜い、つまんないの〜」
リナはしぶしぶながら後ろにとどまった。
3人はまだ目を開かない・・・・・・・・。
そして30分が経過。
「・・ねぇねぇ、いつまでこうやってればいいの?」
少々げんなりした様子のリナはゼロスのマントを引っ張る。
「・・・・おかしいですねぇ、もう目を覚ましても良いんですけど・・・・・・」
「まだ寝てるわよ、こいつら」
「う〜ん、じゃあ紹介でもして待ちましょう」
「紹介??」
「はい、まずは金髪の方からです。この人間はガウリイ=ガブリエフと言って元光の剣継承者です」
「ふ〜ん、顔がよく見えないけど兄様のほうがかっこいいわね」
あまり関心なさそうなリナ。
前の事を覚えていないリナにとって人間のことなどどうでもいいのだろう。
「次は黒髪の方。この人間はセイルーンという国のアメリア姫で、巫女頭もやっている方です」
「ふ〜ん、邪魔ねぇこいつ。起きる前に殺しちゃおうかなぁ」
「・・・・ゼラス様から許可が出てませんよ」
「ちぇっ!!」
(・・・・魔族としては優秀なんですが・・・・気をつけないと計画通りに行かないかもしれませんねぇ)
「次は石の方ですね。この人間は昔ある人間によってキメラにされたゼルガディス=グレイワーズです」
「え〜?これでも人間なの?こいつなら仲間に引き込めないかなぁ」
「無理ですね、僕も何回かお誘いしたんですけど来てくれないんですよ」
「ふ〜ん、じゃあ殺しましょ♪」
ゼロスの顔が思わず引きつった。
こう何度も何度もなぜ殺したがるのか・・・・・・・・。
ゼロスは元から人間殺しは好きではない。
こう言うと勘違いされるかもしれないので付け加えるが、ゼロスにとっては人間なんて蟻のようなもの。
食事以外に殺したって、おもしろくもなんともないのだ。
だが、リナは違うらしい。
殺したいだけなのか、はたまた力が有り余っているのか・・・・・・。
「リナ、人間なんて殺してもおもしろくないですよ?それでも殺したいのですか?」
「うん、殺したい♪」
「・・・・・そうですか。でも今はやめてくださいね。こんな弱いのを倒しても仕方ないですから」
「じゃあ、後で強いのを殺してもいいの?」
──その時ゼロスの瞳が少し開き、紫の瞳が光った!?
「えぇ、後で強い人間を用意してあげます」
「あ!兄様の瞳って綺麗な色ね。あたしも完全な紫がよかったなぁ」
「そうですか?リナの朱紫も綺麗ですよ。なにしろリナの髪の色には紫よりも朱紫の方が合いますからね」
「えへへ、ありがと♪」
「お喋りはこの辺にしておきましょうか、もう起きそうですよ。さぁ、僕の後ろに」
ゼロスは半ば強引にリナの手を自分の後ろに引いた。
リナは怒りもせずにゼロスに従い後ろに隠れる。
数秒後、ゼロスが邪魔で見る事は出来なかったが1人起きあがるのが気配でわかった。
(う〜ん、3人のうち誰かしらねぇ。この気配は知ってるような気がするんだけど・・・・・気のせいよね)
「やっとお目覚めですか、ガウリイさん?」
この時にはもうゼロスの瞳は閉じられ、いつものニコ目に戻っていた。
わざとリナの気配がわかりやすいように細工もしておく。
(ガウリイ・・・?あ、金髪の人間ね)
「・・・・これはお前の仕業だな?」
びくっ!!
ガウリイの殺気立つ声に、リナが一瞬震えた。
なぜか恐くなってゼロスのマントを両手でぎゅっと掴む。
「そんなに恐い声出さないで下さいよ、僕の妹が恐がるでしょう?」
くすくす笑って言うゼロス。
「後ろにいるやつか?ふ〜ん、お前にも妹がいたんだ」
「ほぉ、さすがはガウリイさん。気づいていたんですか?」
「そりゃそれだけの力をもった魔族が気配も隠さずに隠れていたら誰だってわかるさ」
ガウリイは呆れたように言った。
ゼロスは更に笑う・・・・。
「なにがおかしい?」
「いえ、気にしないで下さい。それじゃ、紹介しましょう。もう出てきてもいいですよ」
そう言われてゼロスの後ろから出てきた少女を見てガウリイは驚愕した。
「なっ!?リナ!!でもこの気配は・・・・・」
「さぁ、リナ自己紹介してください」
「え〜?人間相手になんで自己紹介するの?」
「・・・・お願いですからしてくださいよ」
(そうしないと、おもしろくならないじゃないですか)
「はじめまして、リナ=ゼリス=メタリオムよ。獣将軍やってるわ」
なんて適当な挨拶・・・・・・・。
「ゼロス、どういうことだ?こいつがリナの姿をした魔族じゃないのはわかる。だけど気配がリナと微妙に違うぞ!」
びくっ!!
ふたたびガウリイの殺気にリナが震えた。
それを見たゼロスは優しくリナの頭をなでる。
ついこの前までガウリイがしていたように・・・・。
「リナをいじめないで下さいよ。かわいそうにこんなに恐がってるじゃないですか」
「こ、恐がってる訳じゃないわよ!!」
必死に言い訳するリナの姿はガウリイがよく知っているリナだった。
同じはずなのに違う・・・・・・・。
「リナになにかしたな?」
「ちょっと!!あたしをなれなれしく呼ばないでよ」
「リナ、ちょっと黙っていてくれます?僕はこの方とお話があるので」
「・・・・は〜い」
リナはおとなしく近くにあった椅子に腰掛けた。
それを見届けると、ガウリイはふたたびゼロスだけを睨みつけた。
「何をした?」
「何のことでしょう?」
「ふざけるな!あいつはリナだ。絶対に!!」
「たしかに『リナ』ですよ?」
「名前の事じゃない!!なぜ魔族になっているんだ。しかも、不完全な魔族に」
「何をいってるんですか?ここにいるリナは完全な魔族ですよ」
ただし精神だけね、と心になかで呟く。
わざわざ教えるなんて親切な事はしない。
「違う!!あいつは絶対に魔族となんか契約しない」
(不完全?契約?なにいってるの、この人間)
事情を知らないリナにはわからないことだらけだった。
しかし、ゼロスにいわれた以上口を挟むわけにはいかない。
大人しく待っているのも退屈だったので寝ることにした。
「・・・zzz・・・・ZZZ・・・・・zzz・・・・」
リナの寝つきは早かった。それこそのび太君並に・・・・・。
リナが寝たのに気づいたガウリイはパッと表情を明るくさせた。
「これではっきりしたな」
「う〜ん、寝ちゃうとは思いませんでしたねぇ」
「魔族は寝たりしないよな?やっぱりリナになにかしたな」
「それは秘密です♪」
口元に人差し指をもっていき決めポーズ。
「あ、ちなみに前との違いわかります?」
「決定的な違いは精神そのものだろ?」
「くすっ、よくわかりましたね。ご褒美に今日は殺さないでおきましょう」
リナには殺してはいけないと命令が出ていたのだが、ゼロスには出ていなかった。
それは、殺してもいいという意味になる。
しかし殺さなくてもいいともとれるので、楽しみは後に持っていくことにしたらしい。
(この方たちを殺すのは楽しいでしょうね。きっと普通の人間の何倍も負の感情を頂けますよ)
「それじゃ、さようなら」
いつのまにかリナを腕に抱いて、ゼロスはやはり笑ったまま消えた。
「くそっ!!」
ガウリイはリナが寝ていた椅子を蹴飛ばした。
その椅子に残っていた微かなぬくもりが更に悔しさを与える・・・・・・・・・。


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