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「ごめんなさいね、リナ。あなたの愛しいへっぽこ魔族との約束を消しちゃって」
ピキ!
「あ〜らごめんなさいね、ゼロス。おまえの愛しい人間ごときとの約束を消しちゃって♪」
・・・・二人とも沈黙。
栗色の肩までの髪の女性はに〜っこりと微笑んでいて、金髪の髪の女性は唇を片方だけ吊り上げている。
これは異様な組み合わせである。
スィーフィードナイトのルナと獣王ゼラスだ。
真っ白な空間に丸い水晶のような球を目の前にして二人とも浮んでいる。
そして水晶には首を傾げたゼロスとリナが映っていた。
「協力するのは今回限りでしょうね」
「そうねぇ、よほどの事がない限りありえないわ」
「今回はなぜ協力したのかしら?獣神官のため?」
「いえ、私のためよ」
ふんっとそっぽを向き言い放つゼラス。
ルナはくすっと笑うと、いたいところをついた。
「駆け落ちでもされたら大変でしょうからねぇ」
「・・・」
「正反対の者に惹かれるのはしかたがないわね」
妹の事を淡々と語るルナだが、額には青筋がちょっぴり。
「どうせ記憶を消してもまた惹かれるんでしょうねぇ、あの子達は」
「そうなるわね」
「・・・・・・・・そのときはまた消すのでしょう?」
「・・・・・・・・えぇ、もちろん♪人間との恋なんて許さないわよ」
実はゼロスが混乱した後、こういう事が起きていたのだった。
ゼロスを心配したリナが顔をのぞきこみ、どうしたの、と声をかけた。
ちっとも反応しないゼロスにリナはいたずらを思いつく。
にっと笑うと両手でゼロスの顔を挟んで・・・・・・・・かる〜く口付け♪
「・・・な!?リ、リ、リナさん?」
「や〜っと正気に戻ったの?」
「へ?あ、ぼ〜っとしてました?」
「うん、10分ぐらいかな。・・・・・・そんなにさっきの質問は難しかった?」
「・・・・さっき、あなたの事を気に入っているといいましたよね」
その言葉にリナの頬がほんのり赤く染まる。
自分からはキスしたくせに言葉には弱いらしい。
「僕の上司は僕の気に入った物を壊させるのが好きなんです」
「・・それって・・・・・・」
「あなたの事がばれたら僕はあなたを殺さなければならないでしょう」
「なんで!!」
「僕達魔族にとって上司の命令は絶対です、逆らえません」
ゼロスはリナから目をそらした。
しかしリナはゼロスから目をそらさない。
「・・・・・一緒にいられないって事ね?」
「はい・・・そうです」
「そっか・・・・・・・」
リナがなんともいえぬ表情でふっと笑った。
あきらめがついたのだろうか?それとも開き直っただけ?
その時いきなり回りの木々が二人に向かっていっせいに倒れてきた!!
バキッ―――メキメキッ!!
「リナさん!!」
「黄昏よりも昏きもの・・・・・ドラグスレイブ!!」
回りにあったはずの木は赤い光に飲みこまれ灰と化す。
ぱらぱらと小枝が降ってきたものの、怪我はなかった。
「なんだったの・・??」
「・・・・・・・・・・・・・お久しぶりです、ゼラス様」
急にかしこまったゼロスの目の前には一人の金髪美女の姿が!!
ゼラスと呼ばれた女性はなにやらうれしそうにリナを見下ろしている。
「あ〜ら、ゼロス。こちらにいる女の子はだれかしら?」
「あたしは」
「偶然出会った人間です、ゼラス様の思っているような事はありません」
リナがなにか言いかけるのをさえぎり、ゼロスが先に説明をした。
「ふ〜ん、偶然であった人間ねぇ。あなた、名前は?」
「・・・・リナ=インバースよ」
「あぁ、あれの妹ね。これはまたおもしろい組み合わせよね、ゼロス」
「そうですか?ただの人間でしょう」
リナはなにか言いたかったが、ゼロスが自分の事をかばっているのがわかるのでぐっとこらえた。
おそらく自分がなにか言えばゼロスと戦わなければならない。それはなるべく避けたかった。
「そんなのはどうでもいいの。で?」
「なんでしょうか」
「このリナちゃんはあなたのお気に入り?」
「いえ、人間などは目にも入りません」
「ふ〜ん、じゃあ今私が殺しても良いわね?」
「お待ちください!!きっとこの少女は後で役立つはずです」
「ゼロス、おまえが素直に気にいっていると言えば殺さないわよ?どうする?」
ゼロスは相変わらずかしこまったままで言葉に詰まっていた。
もしここで気にいっているといえばリナはたすかるかもしれない。
が!何かある事はわかっている。
ここで選択を間違えたらきっと大変な事になる。
そう思ってゼロスは慎重に言葉を選んでいたのだが・・・・・・・・・・・。
「・・・あたしは・・・あたしはゼロスが好きよ」
リナが先に口を開いてしまった。
「あら、リナちゃん?あなたに聞いているんじゃないのよ。黙っててちょうだい」
「嫌よ、あたしはゼロスが好きなの。ゼロスがどう思っているかなんて知らないけどあたしは好き」
「お子ちゃまは黙ってなさい、リナちゃん」
そう言ったゼラスにさっきまでの微笑みはない。
「確かにあたしはまだ子供だけど後5年もすれば大人になるわ。魔族にとって5年なんてあっという間でしょ?」
「そうねぇ、じゃあ私と賭けをしない?」
「賭け?」
「そうよ、もし5年後のあなたの誕生日までにあなた達がまだ好きだって言うなら認めてあげましょう」
「もしだめなら?」
「あなた達が出会った日からの記憶は全て消すわ。それだけよ」
「わかった、その賭けにのる」
「やめてください、リナさん」
今まで黙っていたゼロスが顔を上げて鋭く睨みつけた。
「やめない、どうせ賭けにのらないとこの場で殺されるんでしょう?」
「あら、よくわかったわねぇ♪」
「あなたはあたしよりはるかに強いわ。あの呪文を使ってもね。それなら賭けにのった方がいいでしょ?」
「ですが・・・・」
「ゼロス、リナちゃんがやるきになってるんだからいいじゃない」
「・・・・・わかりました」
「じゃあ、ゼロスはうちに帰りなさい」
何故かゼラスがうれしそうに微笑みながら命令する。
ゼロスにはその笑みがやけに気になった。
しかし、命令は命令なので従うしかない。
「それではリナさん、また後で仕事が終わり次第あいにいきますね」
「バイバイ、ゼロス。あんたから気持ちをはっきり聞いてないんだから後で言いなさいよ?約束だからね!!」
「あはは、そうでしたね。後でいやってほど言ってあげますよ」
こうしてゼロスは闇に消えた。
残るはゼラスとリナのみ。
「目の前でいちゃつかないでくれないかしら?」
「いいじゃない、別に」
「先に言っておくわ。私は人間が大嫌いなのよ、覚えておいてね」
「はいはい、それで?何か用があるの?」
「あなたの記憶は消そうかとおもって」
「なんでよ、それじゃ賭けは出来ないじゃない!!」
「ま、がんばって思い出せばいいでしょう。∈∂ζ!!」
ゼラスの口から聞き取れないような言葉が発せられて・・・・・・リナはその場で倒れた。
「さて、スィーフィードナイトにも説明した方がよさそうね。あれも魔族が嫌いだから協力してくれるでしょう」
たおれたリナを横目にゼラスは妖しく微笑んだ。
その後1,2年してからようやくリナにあえたゼロスは記憶がない事を知り愕然とした。
最初は会えなかったことに怒ったリナがわざと忘れているふりをしているのかと思ったのだが違った。
本当に忘れていたのだ。
なんだかんだでタリスマンを売った後、ゼロスは1つだけ聞いてみた。
「ねぇ、リナさん」
「なによ、なれなれしいわね」
「失われた物って戻って来ると思いますか?」
「当たり前じゃない、最初からないんじゃなくてあったものがなくなったんでしょう?それならいつかは戻るわ」
「・・・・そうですね、努力してみましょう」
約束の日から5年後、結局二人の記憶は消されてしまう。
今度は片方ではなく二人とも消えてしまった。
しかし、失われた物はいつかは戻る。
確かに一緒に暮らした時間は存在したのだから――――――
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