お姉ちゃんになった日
紅い髪の小さなこが、母親らしき女性の前で紅い瞳からぼろぼろと涙を流している。
母親の方は相当怒っているらしく、泣いている女の子に優しい言葉などかけない。
「・・うっ・・ひっく・・・お・・ねがい、返して・・・・いらないなんて言わないから・・・えっぐ・・」
「でも、ルナはいらないって言ったわよね」
幼女の名前はルナ。
この道を少しいったところにあるインバース家の長女だ。
たしか今年で4才だったはずである。
ここいらの噂によると、彼女は誰にも負けた事がないらしい。
・・・・・・・・ルナを誘拐したやつらを、逆に半殺しにしたという事実もある。
だが、今のルナからはそんな姿は想像も出来ない。
母親に向かって泣きながら「返して」と繰り返すルナ。
小さな体がなお小さく見える。そんなルナに母親は容赦なかった。
「ルナ、あなたは昨日なんて言ったの?いらないって言ったんでしょう?」
その言葉にルナが体をビクっと震わせた。
「・・っ・・・ごめんなさい!!・・・ひっく・・もう・・言わな・・・から・・返して・・」
「お母さんに謝っても仕方ないでしょう。誰に謝らなきゃいけないのかな?」
「・・・ふぇ・・ひっく・・・・・・リナ・・・・でも・・いないよぉ・・・ふぇっ・・え〜ん・・」
「よくできました」
ようやくここで母親はルナを優しく抱き上げた。
腕の中で泣き続けるルナに優しく微笑む。
「さぁ、おうちに帰ってリナに謝りましょうね」
「・・え?リナおうちにいるの?」
ルナが驚いた様子で顔を上げた。
母親はふふっと小さく笑いをこぼすと、頷きながらいう。
「もちろんよ」
「だって!!お母さん、ルナが昨日リナなんていらないって言ったから魔族にあげちゃったって言った!!」
・・・・・それが本当ならずいぶんな話である(^^;
母親は苦笑すると、ルナの言葉に訂正を加えた。
「・・・あげちゃったって・・・・お母さんは連れていかれちゃったって言ったのよ・・・・」
「同じだもん!!」
「同じじゃないわよ・・・・。まぁ、いいわ。早く帰ってきちんと謝りましょうね」
「うん、もういらないなんて言わない!!リナはルナが守るの」
「そう、ルナが守ってくれるのね?」
「リナがいなくなっちゃうのはやだ。だからルナが守るの」
「はいはい、がんばってちょうだい」
「うん♪」
ようやくルナの顔に笑顔が戻った。
家に着くと、母親の腕から飛び降りていそいでリナの元に向かう。
2階にあがりリナが寝ていると思われる部屋に入ると・・・・・・・赤ちゃん用のベットの上ですやすや眠っている。
「よかったぁ、ちゃんとここにいる。ごめんね、リナ」
そう言うと、ルナはベッドの柵の隙間から腕を伸ばしてリナの小さな手を握った。
そこにはちゃんとぬくもりがある。
そのぬくもりが存在を証明している様で、ルナは安堵のこもった笑みを浮かべもう一度謝った。
「ごめんね、今日からはルナが・・・じゃなくてお姉ちゃんがリナを守る!!」
こうしてルナは自分を『お姉ちゃん』と呼ぶようになった。
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