千古
「あなたが眠ってからもうどのくらい経つのでしょうね」
唯一無二の闇の中、紫の瞳を持った一瞬美女かと思わせるような青年が手を伸ばした。
その先に浮びあがったのは透明なクリスタル。
そしてその中には少女が一人、目を瞑って微笑んでいるかのように眠っている。
かつてこの少女は体中から生気があふれ、常に輝いていた少女だった。
その輝きゆえか、少女は闇に惹かれた。
闇である青年もまた光に惹かれ、二人はいつしか心通わせるようになった。
しかし種族の違う二人は時間を恐れるようになる。時間が経つにつれ輝きを増す少女。
そして時間がいくら経っても変わる事のない青年・・・・・・・・・・・・・・。
「・・・・・リナさん、僕から離れないで下さいね」
「へ!?なにそれ??」
そんな会話をするようになったのは二人が心通わせてから1年目になった時。
もともと鈍感な少女は青年がそこまで恐れていることに気がつけなかった。
そして2年目・・・・・・。
「リナさん、僕はいつか狂うかもしれません。その時あなたはどうしますか?」
「う〜ん・・・・・その時考える、かな」
「そうですね」
この時からさすがの少女も青年の怯え方が普通でないことに気がついた。
だがそれに気づいても助けるすべを知らない。月日はそのまま過ぎて行く・・・・・・。
そして3年目―――
「リナさん、僕には耐えられそうもないんです」
「・・・・・・・・そっか」
「だから・・・・」
「なに?」
「あなたを永遠に・・・・・・眠らせます」
「・・・・・そう、あたしはあんたを信じてる。これだけは覚えてて、いいわね?」
そう言って少女はにっこりと笑った。泣きそうな青年へ。
「いつかあんたが時間なんて恐がらなくなったら起こすのよ?」
「・・・・・はい、すぐにでも」
「そんときはめ〜いっぱいごちそう用意してないとドラグスレイブだからね?」
「・・は・・・い・・」
「・・・泣かないでよ、ゼロス」
「泣いてません、魔族なんですから・・・・」
「あたしには泣いてるように見えるわ」
青年は困惑した表情で少女を見つめる。
なにも言わずにみつめあった直後、青年はゆっくりと両手をかざした。
――――ピキッ――――ピキパキッ――――
少女が足元からクリスタルに包まれてゆく。その間少女はなにも話さない。
―――――ピキピキピキッ―――――
「・・・・・・・じゃあね、ゼロス・・・・・・・・・」
――――ピ―――――キッ―――――――
少女は完全にクリスタルと化した。しかしさっきまで輝きはそのまま残っている。
「これでリナさん、あなたは永遠です。僕が恐れることは何もない」
青年はクリスタルにそっと手をおいた。
「・・・・いつか僕が」
もう片方の手もクリスタルに添える。
「時間の怖さよりも強いものをみつけたら・・・・・・・・・・・また会いましょう」
「あれからもう100年ですか・・・・・いえ、120年でしたっけ・・・」
あの時の様に、青年は片手をクリスタルに添える。
「ごめんなさい・・・・」
そしてもう片方の手も添え、少し大きめのクリスタルを苦もなくぎゅっと抱きしめた。
「まだ僕には見つけられないんです」
その表情は泣いている様にも見えた。青年は魔族のはずなのに・・・・・・。
クリスタルを抱きしめたまま、少女の唇の上に唇を重ねる。
「・・・クリスタルに口付けても冷たいだけなのに・・・・・・・・・」
呟くと、青年は再び少女を闇の中へと大切に戻した。
いつまでも変わらない光の少女を・・・・・・。
「永遠に・・・・・永久に・・・僕はあなたといたい」
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