シークレット
リナさんと別れてしばらくした後、やはり僕の思った通りになった。
こうなる事はわかりきっていたのでべつに驚きもしないし喜んだりもしない。
いつも通り我が主に微笑み従うだけ。
『リナ=インバースを』
「はい、ゼラス様」
交わした言葉はこれだけだったが、僕には十分理解できた。
これでも魔族としては上級ですしねぇ、当たり前といえばそれまでのこと。
おもしろい人間が一人いなくなるのはもったいないが、また探せばいい。
人間など消しても消してもいくらでもわいてくる者。
まぁ、彼女と同じ者はいないでしょうけどね・・・・・・・・。
さて、消しに行きましょうか。
最高の方法で・・・・・・・・・・・
ある晴れた午後、穏やかな時間と何もかわらない風景。
人間なら外で紅茶でも飲みたくなるような陽気ですね。
おや、そんな事を思ってたらリナさんがお茶してるじゃないですか。
――――シュンッ―――
「こんにちわ、リナさん」
「・・・・っっわ!!いきなり現れないでよ、おどろくじゃない!!」
彼女はべしっと僕をはたいた。
そしてどうだっ!と言わんばかりに光り輝いた笑みを向ける。
ドクンッ――――殺したい・・・・・
・・・・・・・・がまん、がまん・・・・・・まだ殺さない・・・・・・。
さっきから殺したくなるのを抑えるのが苦しい。
なぜこんなにもあなたを殺したくなるのでしょうね、人間なんかを。
殺したって紅くなるだけなのに・・・・・・・・。
ドクンッ――――ころしたい・・・・・
紅い場面を頭に浮かべると更に増す殺気。
・・・・・・・殺気ってこんなにも狂おしくなるものでしたっけ?
「ゼロス?」
「はい?」
「なんかぼ〜っとしてるわよ」
「そうでしたか?それよりガウリイさんに席を外していただきたいんですけど」
ちらっとガウリイさんの方を顎でさし、そう言うと空気が張り詰める。
あらら・・・・ガウリイさんが怒ってますねぇ。
「心配しなくてもリナさんをとったりなんてしませんよ、はっはっは♪」
更に増す重い空気。
ちょっとしたおちゃめだったんですよぉ〜。
一方彼女は真剣な表情だった。
ここでばらしてしまうような僕じゃないですよ。
「ね、席を外してくれませんか?」
「・・・・・・ガウリイ」
「あぁ、わかった」
・・・・・・・・・今ので何がわかったんでしょう?
僕にはさっぱりなんですがおそらく席を外してはくれるようですね。
ガウリイさんは不機嫌な表情で街の中へ消えた。
あの人はなかなか正直な人ですから影からこっそりなんてことはないでしょう。
ガウリイさんが完全に消えると、彼女は僕にお茶をすすめた。
まぁ、いいでしょう・・・・・・・・まだ、ですけどね。
「ありがとうございます」
「これあたしが作ったのよ、おいしいでしょう?」
再び僕だけに向けられる笑顔。
ドクンッ!――――――コロシタイ・・・・・・・
まだ、です・・・・・・・・・。
「おいしいですね、こんな趣味があったとは思いませんでしたよ」
「くすっ、あんたでもわからない事なんてあるのね」
なにがそんなにおもしろいのか、しばらく彼女は笑い続けた。
ねぇ、あんたが知らないことはまだあるのよ。
これを言ったらあいつはどんな顔をするんだろう?
驚いて目を見開く?
紫の瞳を見せてくれる?
それとも、ほぉとかなんとか言うだけ?
きっと最期のがあたりね、あんたはいつもそうだから。
「で、今日はなんの用?」
何食わぬ顔をして言っているつもりだけど実際はどうだかわからない。
あたしだって魔族じゃない。完全に感情を殺す事は出来ない。
けどこれだけは隠してみせるわ。
あたしの・・・・・・想いだけは・・・・・・・・。
だけど・・・・・・・だけど・・・・・・・・やっぱり抱きしめて欲しいよ、ゼロス。
「あ・・れ・・?ゼロス?」
突如消えてしまったゼロスの姿をきょろきょろと探すが、どこにもゼロスはいない。
目の前には入れたばかりのお茶が湯気を立てているだけで、飲んだ形跡すらもなかった。
まるでゼロスがいたのが夢だった様に・・・・・・・・・
紅い・・・・ですね・・・何もかもが紅いですよ、リナさん。
やはり貴方も紅いんでしょうか?
代わりに殺したガウリイさんがこんなにも紅いんですから、貴方はもっと紅いのでしょうね・・・・・
下に横たわる真っ赤に染まった肉をいとおしそうに撫でると、体についた紅を全て払った。
そのまま何食わぬ顔でリナの元へともどる。
まだ冷めていないお茶を飲むために・・・・・・・・・・・・・・。
そして再び狂おしい殺気で自分を刺激するために・・・・・・・・・・・・。
決して彼は少女をすぐには殺さない。
創造主からの命令は期限がない為、自分が楽しむ為に。
溢れ出した殺気はまわりの者へと注がれる。
それを少女は気づかない、彼は気づかせない。
そして彼女も想いを気づかせない・・・・・彼は気づかない・・・・・・・。
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