ほのぼの
「おとうさぁ〜ん」
小さな女のこがガウリイの元へ走ってくる。
お父さんと言う事は、ガウリイの子供・・・・?
ガウリイはいつ転んでもおかしくない少女から目が離せなかった。
側によってやりたいが、となりに眠っているまだ少女のような女性が手を離してくれない。
「おいおい、そんなに急ぐと転ぶぞぉ」
声だけかけるが聞いちゃいない。
母親譲りの紅い瞳をきらきらと輝かせてパタパタと走ってくる。
走るたびに金色のさらさらの髪がぴょこぴょこはねるのが見ていておもしろい。
おまけに服には泥が飛び散ってゆく。
てってってって・・・・べちゃ・・・・ってってってってべちゃべちゃ・・・・
(あ〜あ、後で絶対リナに怒られるぞ・・・・・)
そんな事はお構い無しに走りつづける少女。
その後ろから、少年が一人歩いてきた。
栗色のところどころはねている髪に、空のように真っ青な瞳。少女の兄だ。
「いいのかぁ、そんなに服汚して?あとで母さんに・・・・・」
ピタッ──
少女の足がぴたっと止まった。
恐る恐る自分の服を見下ろして・・・・・・・。
「ほぉら、よごれてるだろう?」
意地悪そうに声をかける少年。
少女は一瞬悲しそうな顔をするが・・・・。
「よごれてないもんっ!!」
「どこがだよ・・・・・」
少年はそう言うとからかう様にけらけらと笑った。
少女はくるっと後ろ向いて少年をまっすぐ見つめると力いっぱい服を握り締めて叫んだ。
「よごれてないのっ!!!」
しかし、実際服にはあちこちに泥が飛び散っている。
せっかくの白いワンピースも台無しだ。
「はいはい、わかったよ。汚れてない汚れてない」
少年が仕方なくそう言う。
が、少女はまたからかわれていると思い泣き出しそうになってしまった。
紅い瞳がうるうるとしている。
遠くから見ていたガウリイはやれやれと言った風な顔。
となりのリナは寝たまま・・・・・・。
「そろそろ帰るか」
ガウリイはたち上がって服についた芝生を払った。
ぱらぱらと落ちた芝生は少しリナの顔にもかかってしまう。
「・・・ん〜・・・・・」
リナは少し首を振ったが起きなかった。
「ふぅ、よかった。まだ寝てていいぞ。お〜い、二人とも早くこっちにおいで」
「は〜い」
「やぁだぁ!!」
重なって聞こえてきた答えは2種類。
もちろん「やだ」と言ってきたのは少女の方。
その場から動かずに首をぶんぶん振っている。
服の事で怒られるのが恐いのだろう。
「じゃあ、一人で残るのか?」
少年が少女に問う。
「それもやだ!!」
「わがままだな。しょうがない」
急に少年がひょいっと少女を持ち上げた。
一瞬呆気に取られた少女だったが、自分の置かれた状況に気付くと暴れ出した。
「うわっ、暴れるな。落っことしちゃうだろ」
だが、少女はまだ暴れる。
しかたなくそのまま少年はガウリイの元に歩き出した。
「だいじょぶか?」
「うん、なんとかね」
ガウリイの心配をよそにさらっと答える。
この少年は10歳くらいだろうか。
10歳くらいの子供が4,5歳の子を軽く持ち上げるとは・・・・・・・。
「母さんはどうするの?さすがに僕だって一人で精一杯だよ」
「もちろん父さんが抱いて行くさ」
そう言ってこちらも軽々とリナを抱き上げる。
リナは少し身じろぎしたが、やっぱりまだ起きなかった。
「母さんつかれてるのかな?」
「う〜ん、昨日の夜に出かけてたからだろうなぁ」
少年の顔が引きつった。
「え・・・・・。まさか盗賊いじめ?」
ガウリイは苦笑して頷く。
そう、リナは家計が苦しくなると盗賊いじめにいっている。
苦しくなると言っても、リナが買ってくる魔道書のせいなのだが・・・・・。
「さあ、帰るぞ」
「うん」
二人は家に向かって歩き出した。
腕の中に疲れて眠ってしまった少女達を抱いて───。
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