魔道士達の夜
夏の夜。
三日月が妖しく輝き、空には今にもこぼれ落ちそうな満点の星。
日中の暑さが嘘のように、涼しげな風が頬をなでる。
「うーん・・・いい風」
栗毛色の髪を持つ少女が屋根の上で大きく伸びをする。
「こぉんなに爽やかな気分になったのは久しぶりよねー。最近色々忙しくってストレスたまってたし・・・・。んーっ 平へいわっていいわねー☆」
「なにが、「へいわっていいわねー☆」だ・・・・・・」
「え?」
耳元で聞こえた声に思わず振り返り、驚きの声を上げる。
「ゼル!!」
空中に佇んでいたゼルガディスがふわりと屋根に降り立つ。
「何をやってたんだ?リナ」
「何って・・・女の子に言わせる気・・・・・・?(ぽっ)」
「何が(ぽっ)だ何が」
「(ちっ・・・通用しないか・・・)」
「で?この惨状はなんなんだ?」
「うふっ ひ・み・つ」
「・・・・・・・・・・・どうせ盗賊いじめだろうが・・・」
「ふっ、分かってるんなら聞かなくていいじゃない」
「・・・・・・・・」
ゼルガディスは、こんがりと焼けた盗賊達の山(ほとんど再起不能)に目をやり、深々とため息をついた。
しかしまあ・・・今日はまたいつにもまして派手にやったもんだな?」
「だってこいつらあたしのことを胸なしだの寸胴だの・・・・・」
「(全部事実だろうが・・・)」
「ん?何か言った?」
「いやべつに・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
ゼルガディスはふっと息をついて笑った。
「ま、お前らしいといえばお前らしいか・・・」
「?なにそれ、さりげに馬鹿にしてない?」
「してないさ」
「ほんとに〜?」
「ああ。それに・・・・・・・・っおっと」
ゼルガディスは何かを言いかけて口をつぐんだ。
「なに?」
「何でもない、忘れてくれ」
「?」
「それよりリナ、さっきゼロスがお前を探し回ってたぞ」
「ゼロスが?」
「ああ・・・」
「探しましたよリナさーんっ!」
「ゼロス!!」
「お土産持ってきたのに宿にいないんですから。もう、捜しちゃいましたよ」
「ごっめーん。んで、おみやげって?」
「それは秘密です☆宿にいってのお楽しみですよ」
「わかった、帰るわ。そんじゃね、ゼル」
「・・・ああ」
[ほらほらリナさん早く早く」
「わかったってば。ゼルーおやすみー」
「ああ」
「あ、ちょっと用事がありますのでさきにいってください、リナさん」
「ん、わかった」
「いやあ、何か邪魔をしてしまったようですねえ、ゼルガディスさん」
「ゼロスか。何を白々しい。逐一会話を聞いてやがったくせして」
「おや、バレてましたか。はっはっはっは」
「・・・ふざけやがって」
「まあ僕としてもこれ以上ライバルが増えるのは好ましくなかったもので」
「・・・・・・」
「おやおや、だんまりですか。でも僕は、リナさんを誰にも渡す気はありませんよ。ガウリイさんにも、ゼルガデイスさん、あなたにも」
「・・・・・・」
「では、リナさんが待ってますので、僕はこれで」
「俺だって渡す気など無いさ。誰にも、な」
ゼロスの消えた虚空を見つめ、ゼルガディスはそっとつぶやいた。
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