強く儚い者たち
<後編>
部屋に入ると、やはりリナはいらついていた。
顔を見ただけですぐに分かる。
後ろに隠した物は結構大きいのだが、マントがうまく隠していてくれた。
(さて、どうしましょう・・・・・・・)
部屋に入っても喋らないゼロスにリナは訝しげに聞く。
「ねぇ、どうしたの?頭でも打ったわけ?」
「いえ・・・・そういうわけじゃないんです・・・」
「あ!・・・・そっか」
態度のおかしいゼロスの訳を一つだけ思い当たる事があった。
本当は見当違いなのだが・・・・・・・・。
そうだと思いこんだりナはわざとかるく笑って見せる。
「私を殺せって命令がでたんでしょう?・・・あたしは・・・簡単に殺される気はない」
「リナさん・・・・・」
(違うんです!!確かに命令はリナ=インバースを始末する事なんですが・・・違うんです!!)
心の中では言いたい事であふれているのになぜか言葉に出来ない。
リナはそれを肯定ととった。
「簡単に殺される気はないってば、だから・・・安心して・・・は、おかしいよね・・・・その・・」
声がだんだん震えていくのが自分でもわかる。
それくらいリナの声はいつもと違っていた。
(こんなのあたしじゃない!!・・・・でもゼロスを倒せるの?無理、倒したくないよ・・)
お互い沈黙が続く・・・・・・・。
一方、リナ達の様子をアストラルサイドからのぞいているゼラスはと言うと──。
・・・・・・・1人でこけていた。
「何やってるのよ、あの2人は・・・・」
珍しく冷や汗を流しつつ、あきれた声で呟く。
ここまで来るとため息さえ出ないらしい。
もうあきれるしか出来ないと言ったような顔だ。
「ったく、あの子はなんで黙ってるのよ!!さっさと言えばいいでしょうが!!」
帰ってきたらおしおきね・・・と心の中で付け足した。
「あの、リナさん・・・・言いにくいんですが・・・・」
や〜っとゼロスが口を開いた。
決心がついたのだろうか?
遅いぞ、ゼロス君!!
ゼラス様も怒ってるぞ〜〜〜。
「だから、殺しに来たんでしょう?さっさと始めなさいよ、抵抗はするけどね・・・」
真面目な声で答えるリナ。
ゼロスは余計に困ってしまう。
ようやく開いた口をまた閉じてしまった。
視線をリナからはずして、考え込む。
「さっきからなんで黙ってるのよ!!何か言ってよ、ゼロス!!!」
とうとうリナは怒鳴り始めた。
こう言う沈黙は苦手なのだろう。あきらかに動揺している。
ゼロスは、ふうっと短く息を吐くとリナに近づき・・・・・・・片手で抱きしめた!!
「!?ちょっと、ゼロス?」
いきなりの事で頭がパニックしているリナ。
ゼロスはこれ以上驚かせないようにゆっくりと話しかける。
「リナさん、違うんです。実はこれを渡そうかとおもって」
そういって、空いてる手に持っているものをリナにみせた。
きれいな薄紫のドレス。
いや、ウェデイングドレス。
あちこちに小さな花がついていてかわいらしい。
「ゼ・・・・ロ・・ス?・・・これって・・・その・・・・」
「はい、ウェデイングドレスです。僕と・・・・結婚してくれませんか?」
ゼロスはようやく言いたい事が言えた。
本当は照れて言えなかっただけ。
それをリナが勘違いをして、更に言いにくくなってしまった。
(ようやく言えましたね。僕とした事が・・・・照れて言えないなんて・・・)
「ゼロス」
リナがゼロスをまっすぐと見つめる。
ゼロスはにっこりと微笑んだ。
「はい、返事を聞かせてもらえますか?」
リナは下を向くと、震える手をぎゅっと握る。
(おやおや、かわいいですね♪)
そのまま小さな声で何かを呟く。
「・・・・よ・・・」
「よ?小さすぎて聞こえませんよぉ。もう少し大きな声で言ってくれませんか?」
もうウキウキしているゼロス。
リナが答えてくれるのをもう待ちきれない様子だ。
リナの顎に手をかけて、自分の方を向かせた。
「リナさん、顔を見せてくださいね。で、返事は?」
リナはに〜〜〜〜〜〜〜〜っこりと微笑むと────
「最初からそういいなさいよ!!!このへっぽこ神官!!!」
すぱこ〜〜〜〜〜ん!!!
ゼロスの顔にスリッパが炸裂した・・・・・。
「そ、そんな〜・・・・・・」
「もう、なんで最初から言わないのよ!そんな事だったらさっさと言いなさいよね」
ばしっ
「まったく、こんなに心配したあたしがバカみたいじゃない!!」
ばしっ
「今日はず〜っとスリッパで殴ってやるわ!!」
ばしばしっ!
どこから持ち出したのか、両手にスリッパを握りばしばしと殴る。
「リナさんそんな事って・・・・・・・・」
ゼロスは少しだけ傷ついたらしい。
そりゃそうだ、あんなに言うのに大変だったのに「そんな事」と一言で片付けられてしまったのだから。
「そんな事に決まってるでしょう!!あたしが断るとでも思った訳?もちろん、結婚するわよ!!」
「・・・・・?え、そんなに簡単に答えていいんですか?」
「いいって言ってるでしょう!!」
リナの顔が真っ赤に染まった。
ゼロスはリナを確めるようにぎゅうっと抱きしめる。
「リナさん、うれしいです♪」
顔を近づけて・・・・・・・・・そおっとくちづけた・・・・。
「はぁ、長かったわ〜。でも今回は私が意地悪しすぎたかしらね?リナ=インバースを始末しろなんて」
ゼラスはくすっと笑う。
リナ=インバースを始末、それを最初ゼロスは抹殺だと思った。
しかし、なんてことはない。
リナをリナ=インバースと言う名前じゃなくリナ=メタリオムにしてこいと言っただけ。
すなわち、結婚して来いと言う事。
人間の寿命は魔族にしてみればすごく短い。なるべく早くしたほうがいい。
人間は儚いものだから・・・・・。
♪〜そうよ飛魚のアーチをくぐって
宝島が見えるころ
何も失わずに
同じでいられると思う?
きっと飛魚のアーチをくぐって
宝島に着いた頃
あなたのお姫様は
誰かと腰を振ってるわ
人は強いものよ
そして 儚いもの〜♪
再びゼラスの美しい歌声が響く───
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