魔族の事情
<2>
ここは3日前ゼロスが現れた宿。
リナはずっとこの宿に泊まっていた。
いや、止まっていたの方が正しいかもしれない。
実際リナの心は止まっている。
あの夜からずっと・・・・・・・。
バタン!!
急に大きな音を立てて部屋のドアが開いた。
そこから出てきたのはいかにも人のよさそうなおおがらの女性。
この宿の女将だ。
「リナちゃん!!何に悩んでるかは知らないけど身体に悪いよ、たまには外に出たら?」
リナはベットにうつぶせたまま返事もしない。
女将さんはベットに近づくとリナの布団を無理やり剥ぐ!!
「うきゃ〜!?」
リナは見事に床に落ちた。
「ほらほら、いいかげん外にでなさいよ。いい天気よ〜♪」
眩しそうに窓の外を見上げる。
リナも女将さんの視線を追いかけると、外がやけに騒がしい事に気がついた。
「・・・・・お祭り?」
「ああ、そうそう!!今日は喉自慢大会なのよ、リナちゃんも登録しといたわよ。がんばってね!!」
「えぇ〜〜〜〜〜〜〜っ!?」
「たしかもうそろそろ始まるわよ、リナちゃんの出番はあと30分ってとこかしら?」
「え、でもあたしは・・・」
「とにかく歌ってきなさいな、気が晴れるわよ?じゃあ、私は仕事に戻るわね」
言いたいことだけ言うと、さっさと仕事に戻ってしまった。
残されたリナは呆気にとられるばかり。
「・・・・・・・仕方ない、一曲歌ってくるか!!」
元気よくたち上がった。
『さ〜、次はたまたまこの街に泊まっていた美少女リナちゃんだ!!』
司会者のおっさんが調子よくリナをステージに上げた。
(・・・・なんでこんなに出番が早いのよ・・・・)
マイクを前に、曲を決めていなかったリナは焦る。
(今、明るい歌は歌えないわね・・・・・・・じゃあ、あれでいくか)
リナは大きく深呼吸すると、覚悟を決めた!
「13番、リナです。一曲歌わせていただきます!!」
元気のいいリナの声に、会場は盛り上がった。
「い〜ぞ〜!!がんばれよ〜!!」
「ねーちゃんかわいいね〜!!」
「よっ!世界一!!」
昼間からお酒を飲んでいる年よりや若者が一斉に声援を送る。
リナはにこっと笑うと、会場が静かになるのを待ち歌い始めた。
「優しくあなたを見させて この先ずっとメモリ―ズ
ずっと 忘れはしないの Wow・・・
もうこれ以上 傷ついたり 傷つけあったり したくないから
離れたわたし あなたとは 切なかったよ 苦しかったよ
これからの毎日ひとりでずっと 昔に戻れるように
約束はあの日からかなわぬまま すごくそばにあったのに Un・・
優しくあなたを見させて この先ずっとメモリ―ズ
ずっと 忘れはしないの
いつもそばにいたかった・・・あの日もしあなたから
そばにいてくれたのなら Wow・・
きっとどちらか間違ってる とかそんな簡単な話じゃなくて
私にはすべてを賭けた いちど限りの冒険だった
たぶんどんな人だって人として 人なりに人だから
ルールはルール 二人だけの間にも 欠かせないものでしょ
ありがとうと言いたい あなたにずっとメモリ―ズ
ずっと 忘れはしないの
いつもそばにいたかった・・・もしもあなたの 笑顔に
いつも触れられたのなら
たぶんどんな人だって 人として
すれ違っても、気づかない そんな私は孤独のなかで〜♪」
リナは一気に歌い終えると、また軽く一礼をした。
会場はなぜかしんみりしている。
『さぁ、美少女リナちゃんでした!さて、判定は??』
何処からわいて出たのか、審査員が点数をつける。
それを司会者が発表した。
『10点!10点!10点!10点!10点!10点!10点!10点!10点!10点!100点です!!』
「すげーぞ、ねーちゃん!!」
「いいぞ〜!!」
会場からまたしても声援が届く。
「ありがとうございました!!」
リナは再び礼をしてステージから降りる。
なぜか目が熱くなってきて、視界がぼやける。
(・・・やだ!?あたし泣いてる??)
駆け寄ってくる観客をなんとかかわしながらそのまま森の方まで走った。
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