夜明け前
あぁ・・・・・・言っちまったよ。
「・・・・リナ?」
俺は返事を促した。
リナは視線をうろうろとさせて。明らかに動揺しているのがわかる。
もう一度言うか?
ゆっくり、やさしく、おどろかさないように・・・・ってもう驚いてるけど。
「リナ、俺は好きでもない奴とこんなに長く旅はしない。でも俺がどんなにリナを好きでも今の俺には保護者として一緒に旅は出来ないんだ」
出来るだけゆっくり言ったつもりだった。
しかし、リナは困惑する。
そりゃそうだ、今日まで保護者の顔してた男からいきなりそんな事言われても困る・・・・・よなぁ。
「・・・リナ、聞かなかった事にしたい?」
返事を言い出せずにいるリナにおそるおそる聞いてみた。
別に逃げたくて逃げたわけじゃない。
出来れば俺は今の状態から抜けたいんだから。
なんとなくリナから視線をはずす。
そしてリナが一歩動いた、と思ったら――――
どげしっ!!
「・・・っ・・・・いたひ・・・・・・リナ・・・」
派手な音がしたほほを押さえて、再びリナに視線を戻した。
・・・・・・・・・・知らぬ間に思いっきりにらまれていた。
「リナ、いきなりなん――――」
「なんでとか聞いたらラグナブレードでぶった切るわ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・どうして?」
やっ、やばい!!
『どうして』でもいけなかったか!!『なぜ』の方がよかったのか!?
引きつったリナの顔を見て、ちょっとしたジョークなんかを言ってしまった俺自身を恨む。
「・・・もういいっ!!さっさと自分の部屋に戻って!!」
「でも・・・・・・・」
「今日はもう盗賊いじめに行かないわよ、それで良いんでしょう?」
「ちがっ!行かせない為にあんな事言ったんじゃない」
「じゃぁ、なんなのよ!?最初は盗賊いじめに行くなって言ってたくせに、無理やり行こうとしたらだ・・・だ・・・だきしめられ・・るし、あんな事言うし!!そのくせ聞かなかった事にしたいか??ふざけるのもいいかげんにして!!」
リナが怒ってるのはもっともだった。
その怒りのせいで泣いているのか、それとも俺がなかった事に泣いているのか・・・・・・?
理由がわからないままリナを抱きしめる事は出来なかった。
保護者として抱きしめる事はもう二度と出来ないだろうから。
それでも涙だけは指でぬぐう。
「・・・・わるい、リナ。適当に言ったわけじゃないんだ」
「・・・・・・」
「その・・・・・風呂上りだろ?」
「はぁ・・・??」
「その姿で盗賊のアジトになんか行って欲しくなくて、無理やり行こうとされたからつい抱きしめたくなって・・・・・・・・でもそうしたら伝えたくなって・・・・・・・」
「じゃぁ、なんなのよ?」
「一番最初に言ったけど・・・・」
「けど?」
「誰にも渡したくない」
自分の両手をぎゅっと握り締めた。
がまんしないとまたすぐに抱きしめたくなる。
この両手がリナを抱きしめてしまう。
そう、思ったから。
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