妹
君はときどき無防備過ぎるくらい
俺に全てでぶつかってくる
それはあまりにも眩しすぎるほどで
俺は瞬きさえ惜しむ
「だからってぶつかってきすぎだよな、リナは」
本日何度目かのため息をつきながら俺は一人ごちた。
去年の今日を思い出しながら。
目の前に広がってるこの殺風景な部屋もあの日までは確かに暖かかった。
別に何もかわってはないこの部屋。
変わったのは関係だ。
それだけ・・・。
かわいいリナのために部屋を片付けてご馳走を用意した。
リナの喜ぶ顔が見たくて。
ただそれだけで・・・・・。
ご馳走を見せたときのあの無邪気な顔は確かにリナだった。
でもその後の女性の顔もまたリナだったんだ。
俺を見るまっすぐな瞳を俺はそらした。
俺の手を握る手が震えてたのも知ってた。
一瞬俺の唇を見たのも知ってた。
でも・・・・・応えることは出来なかったんだ俺は。
あれからあまり会いにこなくなったリナは、やっぱり今年の誕生日近くなると連絡さえ来なかった。
一応部屋は片付けたんだけどな・・・・・・・・。
「コンビにでもいくか、暇だし」
そういえば今日は何も食べてない。
今月の残り少ない食費を持って俺は部屋を出た。
今年はいつもより寒いななんて思いながら。
家から程近いコンビニにはすぐに着いた。
隣の公園でよくリナとあそんでやったっけ。
「なっつかしいなぁ〜」
後一歩でコンビにも自動ドアが開くというときだった。
俺の耳に声が入ってきた。
「リナさん!」
びくっ
自分でも笑うぐらいに体が反応した。
おいおい、情けないぞ俺。
でも目線はしっかり声のした公園へと向いていた。
ここから見えるのは男にしては長い髪の長身の男だけ。
どうやらおくにリナがいるらしい。
でもあいつとは限らないし・・・・。
でも足は動いてはくれない。
目もそらせない。
「はぁ・・・・」
俺は妹が心配なんだよ。
そう、心配なんだ。
「リナさん!」
「・・・・・ゼロス」
リナは悲しげにあいての男の名前を呼んだ。
目は伏せがちで、彼女らしくなかった。
「リナさん」
もう一度名前を呼んでゼロスがリナの肩を抱いた。
「そんな悲しそうに笑わないでください。なんか壊れそうで消えそうで・・・・・・僕には何が出来ますか?」
「ありがとう、ゼロス」
「ほら、やっぱりそんな風に笑う」
ゼロスがリナのほほを引っ張る。
それでもリナの笑みは儚げだった。
公園のはじでの会話は、周りから見ればただのいちゃついているカップルそのものなのだが・・・。
「リナさん、返事をくれるんですよね」
「うん、ゼロス・・・あのね」
「あ、やっぱりストップ」
ずべっ
がくっと落ちたリナをもちろんゼロスは支えた。
地面とラブラブは避けられたが代わりにリナは腕の中へと収まっていた。
その中はとても暖かく感じられる。
去年の痛みを少しはやわらげてくれる。
頭をなでてもらったあの痛みを。
「ねぇ、リナさん。お試しでいいから僕と付き合ってくれません?」
「お試し?」
「えぇ、とりあえずつきあってみましょうよ、ね?」
「でも・・・・」
「ほら、僕はお金持ちだし頭もいいですし顔もいいですよ?こんないい物件そんなにないですよ??」
「ぷっ・・・・・物件って」
「おや?ようやく笑っていただけましたか」
ゼロスの笑みはリナだけに向けられていた。
とても優しくて暖かい笑み。
この手をとってもいいのかもしれない、そう思ったら自然と笑みが元に戻った。
両手でゼロスの体を離して、人差し指をぴっと立てる。
「わかったわ、お試しよ?」
「はい、お試しです」
「じゃぁ、よろしくねお試し彼氏さん」
「こちらこそ、姫」
ゼロスは一歩下がって優雅に会釈して見せた。
そんな二人の様子を見ていたガウリイは・・・・。
「そっか・・・・よく聞こえなかったけど。おめでとさん、リナ」
それだけ言ってコンビニに入らずに家へと向かった。
少しだけ寂しそうに。
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