目の前に光る数々のライトに照らされて、リナは少しだけひるんだ。
一歩下がったところをゼロスに支えられる。
「大丈夫ですか?フィリアさん、フットだけ消してもらえます?」
「自分でやりなさいなっ、私は衣装で忙しいんです!」
金髪の美女がべーっと舌を出してふんっと行ってしまった。
リナがそれを見て気まずそうに目線を移す。
「大丈夫ですよ、すねてるだけですから」
そりゃぁそうだろう、とリナは思うのだがゼロスはいっこうに気にする様子はない・・・・。
「やっぱさぁ、フィリアに頼んだほうがいいんじゃない?」
「だめですっ!そんなことをしたら・・・・・」
ゼロスの目が恐怖に染まる。
いつもは開かれないの濃紫の瞳が見開かれ、ゆらいでいた。
恐怖の対象はただ一人・・・・・。
「・・・したら?」
ごくりと唾を飲み込んで先を促すリナにゼロスは唇を吊り上げ一言答えた。
「リナさんも・・・・・あの二人に・・・・・」
びくぅっ!
体中のすべてが震えたように感じた一瞬。
そう、一番の恐怖の対象。
一生抗えない相手。
自分より先に生まれ。
自分よりいつも先を歩いている彼女たち。
大きなため息をひとつ。
「ふぅ・・・・、ね?ただ単にからかいたいんですよ、あの方たちは」
「そっか・・・。じゃなきゃいとこ同士でこんな劇の姫だの王子だのやってられないわよね」
「えぇ、お試しでってことでお願いはしましたけど・・・・」
わかってる、というふうにリナは頷いてみせた。
これは決定事項。
そういうこと。
「とりあえず・・・・・ね?無事にこなしましょう、リナさん」
「フィリアにはあとでごきげんとりしなさいよ?」
「もちろんです・・・・後が怖いですから、あっちも」
「でもなんで急に・・・・・??」
どこか腑に落ちないところもあるが、理由を知っても知らなくてもこなさなきゃいけないことに変わりはない。
再びライトを浴びて、練習に戻るしかなかった。


「これでいいんですか?」
「えぇ、よくやったわゼロス」
「ひとつだけ聞きたいんですけど・・・・」
「ひとつだけよ?」
「はい、あの公園にしたのって・・・・・・」
にやり、と彼女たちは目を合わせた。
「ゼロス、もうひとついやな役やってくれないかしら?」
命令ではない珍しい彼女たちからのお願いに断る理由などない。
・・・と、言ってもどうせ断っても命令になるだけだろうという思いもあったが。
「いいですよ」
と、簡単にOKしたのが悪かった。
「本番すっぽかしてね」
「・・・・・・え」
さすがに冷や汗をかくゼロス。
断れば死あるのみ。
頷けばフィリアの天誅あるのみ。
「あのぅ、フィリアさんに間違いなく怒られるんで・・・・・」
「お・ね・が・い♪」
「ね、お願い♪」
「い・・・いやぁ・・・・ちょっと・・・」
一歩ずつ下がるゼロスの肩を姉がおさえた。
「ねぇ、ゼロス?」
さらにはルナも肩に手を滑らせる。
「ねぇ?ゼロス君?」
『殺されたい?』
「・・・イイエ」
『じゃぁよろしく』
まったく同時に言い放つ彼女たちの迫力は凄まじかった。
しかしここで頷くわけにはいかない。
でもこのままはまずい・・・・。
しかし頷けない・・・。
ゼロス、ピンチ!