お試し期間

次の日の朝、やはり空気は重かった・・・・・・・。
食べる量は減っていないものの、いつもの早食い争いがない。
ゼルはいつも黙っているのでまわりから見たら変わっていないように見えるが、わかるものにはわかるだろう。
いつもとは身に纏っている空気が違うのだ。
相当機嫌が悪いらしい。
それはリナも同じなのだが、どちらかと言うとリナはショックの方が大きかったようだ。
それを気遣ってか、ガウリイはリナのおかずには手を出さずにただ黙々とお皿を空にしてゆく。
アメリアはこの空気に何もいえず、心配そうに3人を見つめている。
とにかく4人ともお互いに気まずかった。
ふと、リナが調味料を取ろうと手を伸ばす。
「俺が取るよ、ほら」
「あ、ありがとガウリイ」
そう言って受け取った腕には昨夜の腕輪が光っている。
ついそちらに気をとられてしまったガウリイはいかにもの視線を腕輪に向け、しまったというように目を伏せた。
・・・・・・・・・ず・・・ん・・・・・
更に空気は重くなる。
こういう空気が苦手なリナはとうとう堪えきれなくなった。
ばんっとテーブルを叩き勢いよく立ちあがる。
「ったく!いいかげんにしてよ!!暗くなったってしかたないでしょう!?」
「・・・・それは自分に言いたい言葉だろう?食事中に暴れるな」
ゼルが痛いところを指摘し、冷たく突き放す。
それにかっとなったリナは、周りに客がいるのもかまわずゼルに掴みかかった──!!
「ゼル!!よくあんた平常でいられるわね!?」
「・・・・放せ、俺だって頭にきてるんだ平常なわけないだろう」
「その口調のどこが頭にきてるのよ!!どっからみても気にしてないじゃない!!」
横から様子を見るしか出来ないアメリアは小さな声でガウリイに助けを求める。
「ガウリイさん、止めてくださいよぉ〜」
「・・・・止めるのは簡単だけどそれじゃいつまでたっても解決しないだろ?」
「でも・・・・・・」
「大丈夫、あいつらだってバカじゃないさ。一回爆発させればじきに覚めるよ」
「・・・・そうだといいんですけどぉ・・・・・」
ガタンッ!!
大きな音を立てて椅子からゼルが立ちあがった。
リナに掴みかかられているのもかまわずに立ちあがったので、思わずリナは掴んだまま後ずさる。
「俺がこのまま大きな声で感情に流されるまま怒鳴り散らせば気がすむのか?」
立ちあがった勢いとは裏腹に、ゼルの声はどこか冷めている。
それがかえってリナの感情を逆なでしているのに・・・・・・・。
「なんでそんなに冷静なのよ!?なんでよ!!ねぇ、どうして!?」
「・・・はぁ・・・落ちつけ、リナ」
「もぉ、わかんないよ!!」
「あら〜、みなさんずいぶんと混乱しているようですねぇ」
いきなりでてきたこの声は・・・・・・・・・・。「な!?ゼロス!!」
4人が同時に声を上げた先には、いつからいたのか優雅にティーカップを持ちながら足を組んで座っているゼロス。
・・・ぷちっ♪
何かが切れるような音が!?
「・・ふふふ・・・くっくっく・・・・・四界の闇を統べる王・・・・」
「・・リナさん?こ、こ、ここはお店の中ですよ」
「アメリア、逃げた方がいいかもしれん・・・・」
「俺もそう思うぞ・・・・・・・・・」
「はっはっは、僕も逃げましょうかねぇ〜」
「・・・ぶつぶつ・・・・・神々の魂すらも打ち砕き・・・・」
「今呪文を止めないと、腕輪のはずしかた教えてあげませんよぉ?」
くすっと笑いながらゼロスが余裕な表情でそう言った。
とりあえず、最悪な事態は免れたよう。
リナとゼロス以外は、ほっと胸をなでおろしたのだった。