Missing parts

最近はめっきり寒くなって、秋なんだなぁと思うときがある。
この前までは暑かったはずなのに気づくともう肌寒くなっていた。
きづかなくても時は規則正しく流れているようだ。
そういえば、この季節になるとなぜか思い出したいのに思い出せない事がある。
いつもは全く覚えていないのに、色が落ち始めた木々を見るとなぜかふっと頭をよぎるあの景色。
あたり一面に広がった紅葉。
その中にぽつんと建つ小さな小屋。
そこでいつも迎えてくれた男の人。
あたしより背が高くて・・・・・たぶん黒い髪だと思う。
髪は長くなかったかな。
顔は・・・・・わからない。
ぼや〜っとしたシルエットしか思い出せない。
思い出したいのに思い出せない。
あの人は誰?
あたしの何なんだろう?

「ねぇ、ゼロス?」
あたしはなぜか隣を一緒に歩くゼロスに声をかける。
『なぜか』をつけたのは、あたしが一人出歩いていたらいつのまにか隣にいたからだ。
心臓に悪いからもう少し登場の仕方を考えて欲しい・・・・。
「なんですか?」
「な〜んで、毎日毎日現れるの?」
「いいじゃないですか、べつに」
「何その言い方?用があるならさっさと言ってよ」
「う〜ん、用はあるんですけど今はまだ言えません」
いつも通り人差し指を口に持っていって決めポーズ。
こいつがそのポーズをしたときは何を言っても教えてくれない。
一体何を隠してるんだか・・・・・・。
「ねぇ、リナさん。何か思い出しません?」
「は?」
「・・・・・そうですか」
ゼロスの顔が曇った。
それはと〜っても珍しい事だった。
いつもにこにこしていて表情のないやつなのに、こんな顔するなんて。
・・・・給料減ったのかなぁ?
「そういえば!!ねぇ、ゼロス♪」
「なんですか?」
「あたし、今日19才の誕生日なの!!なんかちょうだい♪」
「え〜?あげるものなんてありませんよぉ」
やっぱり給料減ったのねぇ、いつもサボってるから・・・・・・。
勝手にそう思いこみ、心の中でざまぁみろと付け足した。
だってそうでしょ?最近ず〜っとあたしに付きまとってるんだから!!
「しょうがないわね、盗賊いじめてくるから手伝って。それでチャラにしてあげる」
「ちゃらって、そんなぁ・・・・・・・」
そういうわけで、あたし達は森へと向かった。

今日が期限の日。
なのにリナさんは思い出してくれません。もうだめなんでしょうかね・・・・・・・。
もし思い出してくれなかったら、僕はもうあなたの敵です。
そう、ず〜っとね・・・・・。
僕は盗賊を倒しながらも、感傷に浸っていました。
魔族の僕が感傷に浸るのはおかしいと思いますが創造主はゼラス様ですからねぇ。
どこか普通の魔族とは違うのでしょう。
「・・・・・はぁ、どうしたものでしょう」
横目で盗賊をふっ飛ばしているリナさんを見ながら、僕は大きく息を吐いた。
あの日もこんな森の中でしたっけ。
季節も一緒。
ちょうど葉が紅くなり始めで、風が少し冷たい秋。
今からちょうど5年前、リナさんが14才の頃でしたよね。
あのころの事ははっきりと思い出すことが出来ます。

ゼラス様と喧嘩して家出していた僕は森の中の小さな小屋に住んでいました。
何もないところなのでお腹も空きましたが遭難者を殺して細々と暮らしていた僕。
あの日も僕は餌食を探して森の中を歩いていました。
そこで倒れている少女を一人見つけました。
格好からするとおそらく魔道士。
年は11,2才かと思っていましたが後から本人に聞いたところ14才でした。
気を失っていては食事にならないので、僕は小屋につれて帰って目を覚ますのを待ちました。
怪我もしていなかったし、息もしっかりしていたのですぐ目を覚ますかと思ったのですが・・・・・・。
その子はなかなか起きてくれませんでした。
そして一週間後、や〜っと目が覚めた少女の第一声は・・・・・・・。
「え!?ここどこ?・・・っていうか、あたし誰だっけ?」
ずべっ!
思わず僕はこけました。
なんてものを拾ってしまったんでしょう・・・・・・・。
「お兄さん大丈夫?」
心配そうに駆け寄ってきた少女に、僕はいつもの微笑で言いました。
「大丈夫ですよ、おどろいただけです」
「そっか、聞きたいんだけどあたしって誰?」
「さぁ・・・・僕は森の中で見つけただけなのでなんとも・・・・・」
「じゃ、お兄さんは誰?」
強い意思を持った紅い瞳に僕は戸惑いました。
それでもとりあえず名前は教えます。
「僕はゼロスといいます。あなたは・・・・名前ぐらいはわかります?」
「う〜ん、たしか・・・・・・リナだか・・・ルナだか・・・・・そんな名前よ」
栗色の髪に紅い瞳のルナ?
たしかスィーフィードナイトの特徴がそうでしたよねぇ。
1回しか会った事ないので何ともいえませんが、この子と似てるような・・・・・・。
妹さんはリナって名前だった気がしますけどまさかこの少女が!?
う〜ん、世間は狭いですねぇ。
「ゼロス?いきなり黙っちゃってどうしたの??」
「あぁ、すいません。もしかしたらあなたは知り合いの妹かもしれませんよ」
「え?」
「そうだったら、名前はリナ=インバース。年は・・・・・・見た目からすると11才か12才ですかね」
「あたしは14よ!!」
「・・・・・年は覚えてるんですか」
妙に疲れる、と思いました。
ペースを崩されるというかなんというか・・・・。
今までに会った事のないタイプの人間だったんです。
「ねぇ、思い出すまでしばらくここにいてもいいかな」
はっきり言って嫌でした。
「え・・と・・それは・・・・・」
「こんな寒空の中いたいけな少女を放っておくなんてしないわよねぇ?」
「いや、それでも僕は構いませんが?」
「うっわ〜、ひど〜い。それじゃかわいそうだとか思わないの??」
そんなこといわれても僕は魔族ですしねぇ・・・・。
それを言うか言わないか迷いました。
おそらくこの子はスィーフィードナイトの妹でしょう。
そうなると手なずけておけば後々役立つかもしれない、と思ったんです。
「・・・わかりました。いてもいいですけど食料は自分で取って来てくださいね?」
「OK♪それじゃ、よろしくゼロス」
「よろしくお願いします、え〜っと・・・・リナさんでいいですか?」
「なんでもいいわよ、名前なんて」
「じゃ、リナさんとお呼びします」
「うん、わかった」
こうして僕達の生活が始まりました。