忘却の中の光輝

その夜、外は恐いくらいに静かだった。
今日もまた眠れない夜をどうにかして過ごさなければならない。
眠れない夜は外の静けさに腹が立つ。
少し前だったら、こんな事はなかったのに・・・・・・・・・・・。
俺が悪いのだったらいくらでも謝るし、なんでもしてやる。
あいつと離れなくてすむのなら絶対になんでもやってやる。
でも今回は・・・・・・・・。
『あたしが悪いの』と繰り返すばかりで俺には何も言わせなかった。
何か言う間も与えずに去ってしまったのだから。
一体あいつに何があった?
知らないうちに傷つけていたのだろうか?
それとも好きな奴でもできたとか?
・・・・・・・・・自分で言うのもなんだけど、それは絶対にないな。
なら何故??
「・・・・・・・やめた、もう寝るか」
ごろんと寝返りを打って、適当にかけ布団をかけると、俺は眠くもないのに無理やり目を瞑った。
明日も手がかりもないままにあいつを探すために・・・・・・。

ふと気づくと、すでに日は昇りきっていたらしい。
外の通りはずいぶんにぎわっていて、人が多い。
今泊まっている宿屋は、この通りのど真ん中にあって、それがこの宿屋の人気の秘密だとかなんとか。
・・・・・・・・・・けど、そんなことはどうでもいい、あいつを探さなきゃ。
トントンッ!!
俺が着替え終わる頃にドアが叩かれた。
また、あの少女か・・・・・。
ガチャ
「ガウリイ?どお、着替え終わった?」
俺が何も言ってないのに入ってきたその少女は、そのまま俺の腕を掴むと食堂まで引っ張っていった。
振り払おうと思えばすぐにでも出来るが、とりあえず相手は女のこなわけだしやめておく。
しかし・・・・・・本当にこれが普通の女のこなんだろうか?
目の前でAセットからFセットまでを5人前ずつぺろりと食べてしまうような女のこなんてそうはいないよな。
「・・・・・ん?ガウリイ食べないの?」
「俺はいい、早くあいつを探さなきゃ」
「あんたもほ〜っんとしつこいわね、その『あいつ』とやらもあんたがしつこいから逃げたんじゃないの?」
「・・・・・・・・・・・あいつはそんなんじゃない、知りもしないくせに言うな!」
なるべく抑えていったつもりなのだが、案の定少女はびくっと体を震わせた。
「・・・ごめん、こんなに探しても見つからないから苛立ってるんだ」
「そうみたいね、別に気にしてないからいいわよ」
「・・・・・・・・どこまで俺にくっついてくるつもりだ?」
なるべくさりげなく言ったはずなんだが、少女は口元まで運んでいたスプーンを途中でぴたっと止めて少し傷ついたような瞳をこちらへ向けた。
そしてスプーンを静かに皿の上に置くと、ふっと哀しそうに微笑む。
これが少女のいつもの笑みだった。俺は他の笑い方を見た事がない。
「ガウリイ、その答えはあんた次第よ」
「俺はお前の子守りをしている暇はないんだ、あいつを探さなきゃ」
「ならなぜあたしを追い払わないの?」
「・・・・・・怪我が治ってないからだ」
「それならもう完治したわ・・・・・・そんなことより早く食べちゃって、『あいつ』を探すんでしょ?」
「・・・・・・・あぁ」
俺はしぶしぶ皿に手をつけた。本当はあまり食欲がない。
『あいつ』はちゃんと食事しているんだろうか?無茶はしてないだろうか?
そんなことばかりが頭の中にあった。