くらげの本性は?

<前編>

「おったからさん♪おったからさん♪」
誰もが寝静まっているはずの時間に、リナは一人で山の中にきていた。
もちろん理由は「盗賊いじめ」だ。
本人いわく、世のため人のためらしいが絶対に自分ためだろう。
「あら?まだ生き残りがいるみたいね」
微かに感じる気配に、リナは息を潜めた。
宝を奪うために洞くつ内にいるため、大きな呪文は使えない。
使ったら敵と一緒に生き埋めである。
(・・・2人ってとこかしら?まあ、なんとかなるでしょ)
リナはめぼしい宝を袋に詰めると、気配のするほうへゆっくりと歩いていく。
少し歩くと、向こう側に2つの影が見えてきた。どうやら男女一人ずつのようだ。
洞くつ内は暗いため、こっちからは見えても向こうから見える事はない。
リナは隠れもせずどんどん近づいていった。
やがて顔もはっきりと見えてくると・・・・・・・。
「・・・ん?あれは・・・・」
リナが続きを言う前に、向こう側の男が声をかけてきた。
「よう!久しぶりだな。爆発音が聞こえてきたから来てみたんだが、やっぱりあんたか」
「・・・やっぱりって何よ、やっぱりって」
「そりゃあ、盗賊いじめなんてするのはあんたしか心当たりないしな」
「いきなりごあいさつね、ルーク」
リナがにやっと笑った。
こういう笑いをしたときのリナは危ない。
「黄昏よりも昏きもの・・・・・」
その呪文にやっと気付いたルークは慌てて止める。
ミリーナの方は全くの知らん顔。
「わ、待て!!ここは洞くつだぞ!!!!」
が、リナはまだやめない。
「血の流れより紅きもの・・・・」
ルークの顔がさ〜っと青くなった。
「お、俺が悪かった!!だからやめてくれ〜〜〜〜〜!!」
「リナさん、私まで飛ばす気?」
ミリーナの一言でとりあえず危機は免れた。
「おお!!さすがは俺のミリーナだ!!」
「あなたのじゃありません。ここが洞くつの外だったらなにも言わないわ」
冷たく突き放すミリーナ。
二人のやり取りを見て、リナは笑った。
「くすっ、あいかわらずね」
「おたがいさまでしょ?」
ミリーナも笑って返す。
滅多に見られないミリーナの笑顔に、ルークはしばし見とれた。
ルークの視線に気付いたミリーナはやっぱり冷たく突き放す。
「顔が緩んでるわよ、ルーク」
「いやぁ、俺のミリーナはどんな表情でも綺麗だなぁって」
「あなたのではありません!!」
そういうミリーナの顔は少し赤くなっていた。
「そんなぁ、ミリーナ〜」
(そんなに見せ付けられても困るんだけどなぁ・・・・・・・)
ほおって置いたらいつまでも続けそうな2人に、リナは苦笑しつつそう思った。
「リナさん、この辺に宿あるかしら?」
ミリーナはルークの相手をするのをやめたらしい。
急にリナに話を振ってきた。
「う〜ん、あたし達が泊まっている所ともう1件あったわよ」
「まだ部屋は空いてる?」
「こんな時間じゃもうあいてないわよ」
ここは小さな町なので宿屋は2軒しかなく、どちらも小さいのだ。
おまけにこの時間となると・・・・・・・。
「もしかして、宿とってないの?」
「ええ、なにしろこっちに着いたばかりなのよ」
「じゃあ、あたし達のところに泊まる?」
「え、悪いわよ。ガウリイさんだってもう寝てるでしょ?」
「いいって、あいつならまだ起きてるだろうし」
遠慮をするミリーナに、リナは適当なこと言う。
本当はガウリイが起きているかなんて知らない。
盗賊退治を止めに来ないところを見ると寝ている可能性の方が大きい。
(心配性な保護者だしね♪まあ、寝てたらたたき起こせばいいし)
「でも、邪魔じゃない?」
「平気だって。さあ、寝不足は美容の敵だし宿屋に行きましょ」
「そう?じゃあ、お願いね」
ミリーナはしぶっていたが、結局行く事になった。
ルークはおとなしく2人の後をついていく。
ミリーナがいいと言えばなんでもいいようだ。
まるでどこかのくらげのように・・・・・・・・。