ちびゼロス 飴玉大作戦
<3>
今夜は満月。
満月は人の心を狂わせると言われている。
そのためか、満月の夜は負の感情であふれている。
「おや?今夜は満月でしたか。本当ならどこかへ食事に行くところですが、今日だけは仕方がないですね」
ちびゼロスは木の上に座っていた。
そこからは、少し遠いがリナの部屋が見える。
リナはさっき部屋に戻ってきたところだった。
今は鏡の前に座って髪をとかしている。
「パジャマ姿のリナさんもかわいいですね 」
満足そうな笑みで呟いた。
「・・・・いよいよですね」
どうやらリナは髪をとかし終わり、ベッドの上で飴の袋を開けている様だ。
ちびゼロスは思わず手に力が入る。
リナが飴を口に入れた。
その途端、リナから煙が発生して姿が見えなくなる。
「リナさん・・・・・」
リナを見つめながら甘い声で名を呼んだ。
胸にはリナの美しい姿の期待を秘めて・・・・。
徐々にリナの姿が見えてきた。
最初に見えたのはすらりと伸びた細い足。
次は倍ぐらいに大きくなった胸。
「ほお〜・・・・・・・」
ちびゼロスは感嘆の声をあげた。
煙がなくなり、やっとリナの顔が出てきた。
更に強くなった紅い瞳の輝き。そして、どこか色っぽい顔つき。
「・・・・っ!!」
リナの顔を見た途端、無い筈の心臓がどきっとした。
顔は赤くなっている。
「か、からだの調子が悪いみたいですね」
うわずった声で誰にでもなく言い訳をした。
「今日は帰りましょう!」
赤い顔のまま、ちびゼロスは虚空に消えた。
一方リナは、体の異変に気づき急いで鏡の前に立った。
「ど、ど、どうなってるのよぉ〜!!!!!!」
鏡に映った自分の姿に驚きおもいっきり叫んだ。
ばたんっ!!
「どうした、リナ!」
ガウリイが慌てて部屋に入ってきた。
そしてリナを見て一言・・・・・・。
「・・・・誰だっけ?」
「こぉんのくらげぇ〜!」
っすぱこ〜ん!!
必殺スリッパが見事に決まった。
「リナ・・か?」
頭をさすりながらリナに聞く。
「そおよ!」
リナはそっぽを向いて答えた。
「・・・ずいぶんきれいになったな」
「ま、まあね!」
相変わらずそっぽを向いてるが、耳は真っ赤になっている。
おそらく顔も真っ赤になっているだろう。
「どうして急にそんな姿になったんだ?」
ガウリイはリナに近づいて、顔が見えるところに立った。
「知らない子にもらった飴を食べたらこうなったの」
リナはあれがゼロスだった事にまだ気づいてないようだった。
(ガウリイってこの姿でも知らない人から物をもらっちゃいけません!とかって子供扱いするんだろうなぁ・・・・)
リナはそう思ったが、ガウリイは怪訝な顔をしてこう言った。
「知らない子?近くにゼロスの気配はしたけど、子供の気配はなかったぞ」
「え?ゼロスの気配?」
リナは男の子の姿を思い出す。
肩で切りそろえられた漆黒の髪。きれいな紫の瞳。
そして、最後のあの笑み・・・・・。
「やられた!まさかゼロスだったなんて・・・・」
悔しそうな顔でそう言った。
「いいじゃないか、きれいになったんだし!」
ガウリイはにこっと笑う。
「そういう問題かぁ!!・・・・あ!?」
急にリナの顔が青くなった。
「どうした?」
のほほ〜んと聞くガウリイ。
「あたし温泉で飴もらったの・・・。ゼロスに裸見られたぁ〜!!!!」
リナの顔がぉ赤くなったり青くなったりしている。
ガウリイは何も言わない。
「あの生ごみ魔族め〜!ラグナ・ブレードでぶった切ってやる!!」
そういって部屋を出ようとした途端、後ろからガウリイに腕を捕まれて動けなくなった。
「ちょっと離してよ!」
振り切ろうとするがびくともしない。
なにも言わずに、ガウリイは自分の方に引っ張って抱きしめた。
リナが痛くない程度に力を入れてすっぽりと包み込む。
「な、何してんのよ!」
リナは顔が赤くなっていくのが自分でもわかった。
(あたしってば何で赤くなってるのよ!)
腕の中でリナは懸命にもがくが、ガウリイは腕の力を弱めない。
「全部見られたのか?・・・・・何かされたか?」
いつもより低い声にリナはびくっとする。
「させるわけないでしょ、なに怒ってるのよ。あんたに関係ないじゃない」
ガウリイが恐かったがそれを悟られまいと強がってみせた。
「とりあえず手は出されてないみたいだから今日はいいけど、次に何かされたら絶対許さないからな!!」
ガウリイはそう言うと、リナにかるくキスをして部屋を出ていった。
「な、な!?・・・・なんであんたに許してもらわなきゃいけないのよ・・・」
リナは力が抜けて、ぺたんと床に座りこんだまま当分動けないのであった。
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