強いと言う事

ここは小さな町の小さな骨董品屋。
この店には、やさしい母親と小さな子供が住んでいる。
たまに2人のおもしろいおじさんがやってきて、子供と遊んだり店を手伝ったりする平和な暮らし。
夜になると必ずおとぎ話を聞かせる綺麗な声が流れてくる。
今日はどんな話を聞かせているのでしょう───

「ヴァル、もう寝る時間よ」
フィリアが近くにいたヴァルに声をかけた。
もう外は真っ暗。子供はとっくに寝る時間だ。
ヴァルはもう少し起きていたかったが、体が言う事を聞かなかった。
気を抜くとまぶたがとろ〜んと落ちてくる。
それを見たフィリアはくすっと笑う。
「ほらほら、もう眠いのでしょう?今日もお話を聞かせてあげますから寝ましょうね」
「・・・・うん」
ヴァルは目をこすりつつゆっくりと寝室に向かった。
フィリアもヴァルの後をついていく。
「フィリア、今日はなんの話してくれるの?」
ベットの中に入るなりヴァルは聞いてくる。
「そうね、白雪姫はもう話したかしら?」
「うん、7人の小人の話だろ?」
「じゃあ、シンデレラは?」
ヴァルは一生懸命思い出そうとしたが思い出せない。
(聞いた事あるきがするんだけどな・・・・)
絶対に聞いたことあると思うのだがどうも思い出せない。
思い出そうとすると、違う映像が浮かんでくる。
知らない部屋。
自分と同じ姿の2人。
二人はとても優しい顔でこちらを見ている。
(・・・え〜っと、だれだ?知ってるはずなんだけどな)
女のほうが自分に布団をかけながら話しかけてくる。
優しく自分の頭を撫でてくれる。
優しく微笑んでくれる。
フィリアじゃないことはわかる。
髪の色が全然違う。
自分と同じ色。男の方は自分と同じ色の瞳。
(・・・・思い出すな!!)
なぜかそれ以上は思い出してはいけないような気がする。
「なあ、フィリア」
「なあに?」
「シンデレラのは聞いた事あると思うんだけど思い出せないんだ」
フィリアは不思議そうな顔をしたがすぐに微笑む。
「そう、じゃあシンデレラにしましょうか」
「でも聞いちゃいけないような気がする」
「あら、なぜかしら」
「その話を思い出そうとすると知らない二人の姿が浮かぶんだ」
ヴァルは淡々と語る。
なんの事だかさっぱりわからないフィリアは首をかしげた。
「知らない二人?」
「ああ、おれと同じ姿の二人」
「あ・・・・それは・・・・・・」
フィリアは言葉に詰まった。
おそらくその2人は本当の両親。
ヴァルは小さい頃母親に、今と同じようにお話を聞いていたのだろう。
もしかすると、シンデレラの話をよく聞かせてもらっていたのかもしれない。
(言った方がいいのかしら・・・・・)
フィリアは迷った。
言えば絶対にヴァルは傷ついてしまう。
しかし、いつまでも言わないわけにはいかない・・・・・・。
ヴァルは普通の子供ではないと言わなければいけない時がいつかは来る。
いつまでも黙っているフィリアに、ヴァルは二人を知っているのかと嬉しそうに声をかける。
「しってるのか?教えてくれよ、フィリア」
(ヴァルは弱い子じゃないわ、今話してしまおう)
フィリアは決心した。
しかし、なるべく傷つけないように話したい。
ほんの少しでもいいから傷つけないように・・・・・・。
「ヴァル、今日はシンデレラの話じゃなくて他の話にしましょうか」
「おもしろい話か?」
フィリアは答えに詰まったが、一度は決心した事、話さなくてはならないと勇気を出す。
なるべく話しやすいように微笑んだ。
「おもしろくはないかもしれないけど、とても大切なお話よ」
「大切な話?じゃあ、なんで無理して笑うんだよ」
「そうでもしないときっと悲しくなってしまうの」
フィリアは目を伏せた。
瞳には少しだけ涙がたまっている。
「フィリアが悲しくなる話なんて聞きたくない!!」
「だめよ、お願いだから聞いて」
「どうしてもか?」
フィリアは静かにうなずく。
ヴァルは聞きたくなかったが、ここはおとなしく聞くことにした。
ここでいやがってもフィリアを困らせるだけだと思ったからだ。
(フィリアを困らせるのは嫌だからな)
「じゃあ、聞く」